なぜあのドラマの続きが気になる?「ツァイガルニク効果」をビジネスで活かす方法

仕事

突然ですが、あなたはこんな経験はありませんか?

・毎週楽しみにしていたドラマが、続きが気になるところで「次回に続く」と終わってしまった。
・プレゼンの準備中に、途中で中断した資料のことがずっと頭から離れない。
・別れてしまった恋人のことが、なぜか未練たらしく思い出される。

これらの現象には、すべて「ツァイガルニク効果」が関係しています。

ツァイガルニク効果とは「達成できなかったこと」や「中断したこと」のほうが、「達成できたこと」よりも記憶に残りやすいという心理現象のことです。

私たちは、一度始めたことを最後までやり遂げたいという心理的な欲求を持っています。

そのため、途中で中断されたタスクは、達成するまで脳内で意識に残り続け、記憶に強く刻まれるのです。

これは、私たちの日常生活や仕事や人間関係にも深く関わっており、この心理を理解することでさまざまな場面で役立てることができます。

当記事ではツァイガルニク効果について解説しています。

ツァイガルニク効果について知りたい方はぜひ最後までお読みください。

ツァイガルニク効果とは?

この心理効果は、ロシアの心理学者である「ブロニスラヴァ・ツァイガルニク」が提唱したものです。

彼女はレストランで、注文を途中で中断したウェイターが客の注文内容を鮮明に覚えていたのに対し、会計を済ませた客の注文は忘れてしまっていたことに気づきました。

そこで彼女は、人が未完了のタスクに対してどのような心理的反応を示すかを明らかにするため、ある実験を行いました。

ツァイガルニク効果の由来と実験内容

ツァイガルニクは、被験者に対し、パズルや計算問題など約20種類の作業をこなしてもらいました。

その際、被験者の一部には意図的に作業を途中で中断させ、残りの一部には最後までやり遂げさせました。

その後、どの作業を覚えているかを調査したところ、完了できなかった作業のほうが、完了できた作業よりも約2倍も記憶に残っていることが判明したのです。

これは、未完了の作業が脳に「未解決の課題」として残り、緊張感を生み出すためだと彼女は結論付けました。

この緊張感が記憶を強化し、タスクを完了させたいという欲求を掻き立てます。

ゲシュタルト心理学との関係

ここからは少し難しい話になります。

ツァイガルニク効果は、「ゲシュタルト心理学」が提唱する「人は物事をひとつのまとまりとして捉えようとする」という考え方に基づいています。

ゲシュタルト心理学では、私たちはバラバラの要素を個別に認識するのではなく、全体としてまとまった「形(ゲシュタルト)」として捉えようとします。

例えば、パズルの最後の1ピースだけが残っているときにそこでやめることなんて絶対ないですよね。

最後の1ピースを埋めて終わらせたいと本能的に思うはずです。

未完成なものに対して、人は無意識のうちに完成させようとする心理が働くのです。

ツァイガルニク効果も、この「未完了を完了させたい」という本能的な欲求が根底にあります。

ツァイガルニク効果の活用例

ツァイガルニク効果は、私たちの日常やビジネスのあらゆる場面で活用されています。

この心理を理解して適切に使うことで、自分自身のモチベーション維持や他人とのコミュニケーションを円滑に進めることができます。

実際にツァイガルニク効果が使われている例を見ていきましょう。

日常生活での活用例

日常生活では、ツァイガルニク効果を自己管理に役立てることができます。

例えば、勉強や読書の途中でキリの悪いところでわざと中断してみましょう。

そうすることで「続きが気になる」という心理が働き、翌日の学習意欲を高めることができます。

また、ダイエット中に少しだけ息抜きをして完璧な状態をあえて崩すことで、「明日からまた頑張ろう」と気持ちを切り替えることができます。

SNSで続きをにおわせるような投稿をしたり、ストーリー形式で少しずつ情報を開示していく手法もこの効果を狙ったものです。

ビジネスでの活用例

ビジネスシーンでは、ツァイガルニク効果はマーケティングやチームマネジメントに非常に有効です。

マーケティングにおける活用例

ここでは、ツァイガルニク効果をマーケティングで活かすための具体的な方法を3つご紹介します。

日常生活でよく見るのは、テレビを見ているときに「続きはCMの後で!」というのが代表的なツァイガルニク効果を使ったマーケティング手法です。

そのほかの例も見ていきましょう。

活用方法具体例狙う効果
購入手続きを複数ステップに分けるECサイトで、商品をカートに入れた後、「お客様情報の入力」「支払い方法の選択」「注文確定」のように、購入までの流れを細かく分ける。「あと少しで完了する」という心理を刺激し、途中で諦めてしまう(カゴ落ち)のを防ぐことができます。
続きを期待させる情報発信をするメルマガやセミナーで、「この続きは、次回のコンテンツで詳しく解説します」と伝える。読者や参加者の「続きを知りたい」という気持ちを高め、次のアクション(次回のコンテンツ閲覧や参加)につなげることができます。
あえて情報を小出しにするサービスや商品の全貌を一度に公開せず、一部だけを先行公開するティザー広告を行う。「いったい何だろう?」という好奇心を刺激し、正式な発表への期待感を高めることができます。

日常でも使われており、知らず知らずのうちにあなたもツァイガルニク効果によってマーケターから商品プロモーションを受けています。

マネジメントにおける活用例

チームメンバーの仕事を細かく区切り、適度なところで確認する、あるいは「この部分は〇〇さんに任せたよ」と少しだけ未完了のタスクを残しておくことで、相手に「最後までやり遂げよう」という責任感を持たせることができます。

また、プレゼンの最後に結論を述べつつも「詳しいデータは資料にございますので、ぜひご参照ください」と伝えることで、聞き手の興味を引きつけ、行動を促すことができます。

ツァイガルニク効果の注意点

ツァイガルニク効果はポジティブに働く一方で、使い方を間違えると精神的な負担になる可能性も秘めています。

未完了のタスクが多すぎると、常に頭の片隅に残り続け、常に焦りやストレスを感じてしまうことがあります。

特に、プライベートの未完了な用事や、過去の失敗、元恋人との未練などが頭から離れないのはツァイガルニク効果がネガティブに作用しているためです。

この心理状態が続くと、睡眠不足や集中力の低下につながるため、タスクを適切に管理したり、時にはあえて手放すことも重要です。

まとめ:ツァイガルニク効果とうまく付き合おう

ツァイガルニク効果とは、「達成できなかったこと」や「中断したこと」のほうが、「達成できたこと」よりも記憶に残りやすい心理現象です。

ツァイガルニク効果は、私たちの日常に深く根付いています。

仕事や学習においてこの心理を意識的に活用することで、生産性の向上や目標達成に役立てることができます。

一方で、未完了のタスクが過度なストレスとならないよう、バランスを取ることも大切です。

今回の記事が、あなたのビジネスに少しでも活きてくれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました